夜のお店の給与計算がややこしいのは、ひとつの金額が「時給」だけで決まらないからです。同じ日に出勤した2人でも、指名の数・同伴の有無・売った本数で手取りが変わります。ここを毎月ノートと電卓でやっていると、月末の2日がまるごと消えます。
順番を決めてしまえば、作業そのものは機械的です。この記事では、実際の締めの流れに沿って計算の順番を並べます。
① まず「時間で決まるぶん」を出す
土台になるのは労働時間に対する賃金です。出勤・退勤の記録から、その月の総労働時間を出します。ここが曖昧だと、あとの計算がすべてずれます。
- 出勤・退勤の時刻は、本人の記憶ではなく記録から取る
- 遅刻・早退は「働いていない時間」として差し引く(罰金として引くのではない)
- 22時から翌5時までは深夜割増(25%以上)が必要
「遅刻したから1,000円引く」は罰金=制裁で、労働基準法91条の制限を受けます。「遅刻した15分ぶんの賃金を払わない」は制裁ではなく、働いていない時間を払わないだけなので別ものです。この2つを混ぜないでください。
② スライド(成績で変わる時給)を反映する
多くのお店が、月の売上や指名本数に応じて時給を上げ下げする仕組みを持っています。ここで注意が要るのは「下げるとき」です。
成績が下がったからといって、決めた時給を一方的に下げることはできません。労働条件を変えるには本人との合意が要りますし(労働契約法8条)、就業規則を変えて不利益に変えることも原則できません(同9条)。下がる可能性があること・その条件を、あらかじめ本人と合意しておく必要があります。口頭だけで運用しているお店は、書面にしておくことをおすすめします。
③ バックを積む
指名バック・同伴バック・ドリンクバック・ボトルバックなど、お店ごとに種類も率も違います。ここで多いまちがいが2つあります。
- 01計算のもとになる金額をそろえていない(税込で計算するのか、税抜なのか、サービス料を含むのか)
- 02原価を引くかどうかがスタッフに伝わっていない(ボトルのバックで起きやすい)
とくに2つめは、あとから「聞いていない」になりやすい部分です。原価を引いてバックを出す運用にするなら、①率 ②計算のもとになる金額 ③引く原価、の3つを最初に決めて、明細に出るようにしてください。3つのどれかが欠けると、本人が自分の給与を検算できません。
給与明細(支払明細書)を本人に渡すことは所得税法231条1項で決まっています。社会保険料を引いているなら、その計算書も渡す必要があります(健康保険法167条3項など)。これとは別に、お店には賃金台帳を作って残す義務があります(労働基準法108条・同施行規則54条)。どれも「バック代 ○円」の1行では足りません。
④ 控除するものを引く
給与から引いてよいものは、法律で2つに限られています(労働基準法24条1項ただし書)。この2つ以外は、たとえ本人が「引いていい」と言っていても引けません。
| 引けるもの | 中身と、気をつけること |
|---|---|
| 法令に定めのあるもの | 源泉徴収・社会保険料など。ホステス報酬の源泉徴収は、支払金額から控除額を引いた残りに税率をかけるので、給与とは計算方法が別 |
| 労使協定を結んだもの | 寮費・送り代・店販の立替など。事業場の過半数代表との書面による協定(労使協定)が要る |
衣装代・美容代・立替金を給与から引いているお店は、労使協定があるかを確かめてください。本人からもらった同意書だけでは足りません。ここは実際によく誤解されているところです。
源泉徴収は、雇用契約なのか業務委託なのかで扱いが変わります。実態がどちらなのかは契約書の題名ではなく働き方で判断されるので、迷ったら税理士に確認してください。
⑤ 明細にして、本人が検算できる形で渡す
計算が合っていても、明細が「合計だけ」だと必ず揉めます。逆に、内訳が出ていれば本人が自分で確かめられるので、問い合わせ自体が減ります。締めのあとの手間を減らすのは、実は計算を速くすることより明細を分かりやすくすることです。
毎月2日かかっていた作業を短くするには
ここまでの①〜⑤は、どれも「その日の記録がそろっていれば自動で出せる」ものです。逆に言うと、時間がかかっているお店は計算が遅いのではなく、記録が散らばっているから集めるのに時間がかかっています。
出退勤・伝票・指名・ボトルが同じ場所に入っていれば、給与はその集計として出てきます。NightPOS はこの考え方で作っていて、給与の内訳もそのまま明細として出せます。詳しくは機能一覧をご覧ください。